“水神に感謝する祭り・ロイクラトン” | トップへ戻る |
旧暦12月の満月の晩、タイ国内では、古くより続く伝統的な「ロイクラトン」という祭りが催される。
この夜、人々は川や運河、海岸、そして池にまでロウソクの灯りがともった灯篭を流す。
生命を与えて下さっている水神に今年の農作への感謝を捧げると共に、
川を日々の生活で汚してしまっている事に対するお詫び、
そして来年の加護をも祈願するタイの年中行事の中で最も大切な行事の一つでもある。
満月に照らされた水面の上を無数の灯篭が浮かび流れる様は実に壮観である。
タイ語で「川」ことを「メ・ナム」と言い、直訳すると「水の母」の意。
いかにタイが水を大切にしようと思っているかをうかがい知る事が出来る。
ただ、こと水質汚染に関しては未だに発展途上であることは否めない。
汚水処理施設が絶対的に不足しており、新たに設置する計画があっても
政治家の利権争いで、話がなかなか前へ進まないのが現状である。
街中の運河には今日も生活用水が垂れ流しにされている。
今年日本では、阪神タイガース優勝による、道頓堀川ダイブが話題になったが、
タイでは先日、ある人気アイドル(D2Bのビック)が交通事故を起こし、高汚染の運河に落ちてしまう悲劇があった。
事故自体はたいしたものではなく、翌日には退院して元気な姿を見せていたのであるが、
数日後に落水した際に飲み込んでしまった汚染水によって
細菌が脳に達し、3ヶ月たった現在も昏睡状態が続いている。
タイで運河へのダイブはまさに自殺行為なのである。
そんな運河にも、ロイクラトンの晩には綺麗な灯篭が流れる。
灯篭自体は元々バナナの葉と茎で作られていたのであるが、
近年は安上がりで便利な発泡スチロール製の物が登場し始めた。
また、伝統を無視し、ホッチキスで固定しまっている物もある。
ロイクラトンの翌朝には全てゴミと化してしまう灯篭。
回収業者がいるとはいえ、このままでは環境破壊になりかねない。
しかし、バンコクの知事は先日、昨年同様、回収が容易な発泡スチロール製の灯篭を奨励する声明を発表した。
知事曰く、バイトーン(バナナの葉)は途中で沈んでしまい、
回収が困難で、逆に河川汚染が進むという事を言っている。
勿論、環境保護団体はこの声明に反論中。
さっぱり良く分かりません…
いったい水神に感謝しているのか、水神を怒らせているのか、これではよくわからなくなってしまっているのが現状である。
その雰囲気から、日本のクリスマス・イヴやバレンタインデーのように恋人たちの夜になるロイクラトン。
ロマンチックの裏には「生命なる水」を巡って様々な現実が複雑に入り乱れている。
今年のロイクラトンは今週末の11月8日(土)。
日本でもこの日をはさんで全国各地でロイクラトン祭りが開かれるそうである。