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バイクに乗ったまま、屋台で買物。 タイ版・ドライブスルー |
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私がバンコクに来て、最初に住んだアパート。タイの一般市民が暮らす標準的な部屋であったが、驚いたことに部屋に“台所”が付いていない…。
すぐ、部屋を紹介してくれたタイ人に台所がついていないことを問い合わせてみると、「マイペンライ(大丈夫)。タイは朝から晩まで街のいたるところで“屋台”が開いているから、“台所”は必要無いよ」と教えてくれた。
そのタイ人の言う通り、屋台は庶民の胃袋を支える大切な役割を果たしていて、一日三食の食事を全て屋台で済ませている人も少なからずいるほど、タイでの日常生活に密着した存在なのである。
当然ながら台所が付いている一般家庭もあるが、そうした人々でも屋台外食をやめることはない。なぜならば、スーパーで食材を買って料理を作るより、屋台で食事を済ませる方が経済的かつ手っ取り早いからである。
[屋台メニュー
一例] (1バーツ≒2.8円)
・ 揚げパン 5バーツ/個
・ 豆乳 5バーツ/人前
・ タイ風お粥 20バーツ
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炒飯 25バーツ
・ 麺類 25バーツ
・ カレーかけご飯 20バーツ〜
・ トムヤムクン 35バーツ
・ 白飯 5バーツ
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ジュース 10バーツ
屋台メニューをご覧いただければ分かる通り、屋台では平均して30バーツ前後(≒80円)で一食を済ませることが出来る。
ただ、一食30バーツ前後の食費とはいえ、1ヶ月に換算すると単純計算で約3,000バーツ+α。バンコクに住むタイ人の一人当たり平均月収が1万バーツであることを考えれば、エンゲル係数は決して低いとは言えない。
本当に経済的なのかと思わずにはいられないのだが、タイ人にとってみれば“マイペンライ”なのだろう。
前述の通り、屋台はタイ人の食生活を支える必要不可欠な存在である。ただ、全員が毎食を屋台外食で済ませるわけでもない。
家庭のあるタイ人一家は、家族の団欒をそう毎日屋台外食で過ごすわけにはいかないからだ。そこで、タイの食文化で独自に発達したのが“袋詰め「中食」文化”である。
“袋詰め「中食」文化”とは文字通り、屋台で注文した食べ物を袋に詰めて持ち帰ることを指す。
いわゆる、タイ式テイクアウトといったところだろうか。
日本では、ここ数年の間に中食産業が急成長しているが、タイでは既に数十年も前から“中食”が当たり前となっている“「中食」先進国”なのである。
タイ式テイクアウトの特徴は、食べ物やお菓子、飲み物などあらゆる食べ物が袋に入れて持ち帰ることができることであろう。例えば、汁ありラーメンは<写真1>のように、“汁”や“麺”、“具”、“調味料”と別々の袋に入れ、輪ゴムで綴じて当たり前のように持ち帰って行く。ジュースも<写真2>の通りである。
タイの屋台街に行けば、食べ物を袋に詰めて輪ゴムで綴じる光景をいたるところで目にする事ができる。お店の人がこの一連の作業を器用に行う瞬間は、一見の価値がある(…と思う)。
私の職場・日本料理店でもタイ人客は、時にカレーライスや天ぷらうどん、寄せ鍋セット、お造りなどを持ち帰る方がいる。
日本人の感覚では、「普通持ち帰らないだろう」と思う料理でも平気で持ち帰りを希望し、また現地人スタッフも当然の如く、注文された料理を手際良く袋に詰めてしまうのは、“マイペンライ精神”の賜物なのであろう。
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